《高山本線・2日目・その2》
  
飛騨国府駅で29分のときを過ごし、お隣の上枝駅にやってきました。
岐阜県高山市下切町に位置する上枝(ほずえ)駅は、1934(昭和9)年10月25日に開業しています。ここにもコンクリートの土台に下見板張りの壁を持つ木造駅舎があります。
ファサードの様子です。
下見板張りの壁に、三角屋根がよく合っています。
入口の上部に掲げられた駅名板です。
白いアクリル板にJR東海のロゴマークとゴシック体の文字。ごくありふれた形です。
駅舎を右斜めに見てみます。
赤い切り妻のトタン屋根と下見板張りの壁、三角屋根のファサード、すべてがコンパクトにおさまって、調和のとれた形です。
入口正面、改札口の様子です。
無人駅であるため、切符売り場の窓口はふさがれています。
入口左側、小荷物扱いの窓口の様子です。
小荷物の扱いの業務は既に停止しているので、窓はカーテンで閉ざされています。しかし、木枠の窓、どっしりとしたカウンターなど、そのままの姿で残っているのは珍しく、貴重な姿ではないかと思います。
カウンターにさりげなく置かれている機関車は、地元の小学校の児童の作品だそうです。
入口右側、待合室です。
木枠の窓の下には木製のベンチが置かれています。
入口脇に貼られた建物財産標です。
昭和9年10月、開業当時の建物であることがわかります。
駅舎の右側(富山方面側)にあるトイレです。
板張りの縦壁の向こうの建物は、下見板張りの壁を持ち、駅舎本屋と同じ造りをしています。
ホーム側から見た改札付近の様子です。
木脇の窓に縦羽目板張りの腰壁、ハーフティンバーの白い壁と気の柱、そして腰壁の前の木のベンチ。改札口から垣間見える待合室の様子。茶色の木の中でひときわ映えるエメラルドグリーンの使用済み切符入れ。木のぬくもりが感じられる美しい姿です。
ホームから一段低いところにある駅舎をホームの上から見てみます。
木枠の窓の美しさはもちろん、雪止めのついた赤いトタン屋根もいい感じです。屋根の右側にある筒状の出っ張りは、ストーブの煙突の跡のようです。
高山方面側から見たホームの様子です。
対向式2面2線のホームを持ち、ホームとホームは跨線橋で結ばれています。
上枝駅では1時間41分を過ごすはずでした。しかし、ここでまたうっかりミス。待合室のベンチで、次に乗るはずの美濃太田行きの列車を見送ってしまったのです。目の前に貼ってある時刻表を眺め、次の列車の時間を確認したはずでした。しかし、上りの「高山方面」と下りの「富山方面」を見間違えた模様。ホームに列車が入っているのに、まだまだモードの頭はすぐには切り替わりませんでした。
次の列車は1時間以上後の11時22分。しかもそれは残念ながら高山止まり。次の目的地までは行きません。それは次も次もと続いていて、16時1分までありませんでした。
あれほど綿密に計画を立てたのに、一瞬のぼんやりでパーになりました。ま、それはそれで旅の楽しみ、ということで。
さすがに16時1分までは待てないので、1時間後の高山止まりに乗車、いったん高山駅で降りました。高山発の列車があることを期待したけれどそれもなく、タクシーを使うことに。
目的は高山駅のお隣の飛騨一ノ宮駅。ひと駅だからすぐそこでしょうと思ったのですがそうはいかず、タクシー代約2800円。痛い出費となりました。
岐阜県高山市一之宮町に位置する飛騨一ノ宮(ひだいちのみや)駅は、1934(昭和9)年10月25日に開業しています。
ここにも開業当時の立派な木造駅舎が残ります。
ファサードの様子です。
赤い三角屋根は、飛騨一ノ宮水無神社の社を模したものでしょうか。
入口の上に掲げられた駅名板です。
楷書体で一文字ずつ書かれたタイルを漆喰の壁に埋め込んだ形の駅名板です。
入口右側、待合室の様子です。
外の壁は茶色の板張りですが、室内は白を基調にしています。室内は広く、窓からの光でとても明るい感じです。人影はなく、とても静かでした。
入口の上に貼られた建物財産標です。
昭和9年10月、開業当時の建物であることがわかります。
飛騨一ノ宮駅では、もともと4時間7分の待ち時間、上枝駅でのぼんやりのおかげで1時間ほど短縮しても3時間の待ち時間があります。お天気は快晴。駅周辺を歩いてみることに。
あたりには緑の山々に囲まれて田んぼが広がります。
飛騨一ノ宮水無神社なども見て回りながら、周辺をぶらぶら散歩。道端には宮村と書かれたレトロな消火栓もありました。
駅舎前の広場には「臥龍桜の里」と書かれた看板。
「臥龍桜」とは、駅の裏側にある桜の名称で、龍が臥しているように見えることからそう呼ばれています。樹齢1100歳以上の老樹は国の天然記念物に指定されています。桜の季節には桜祭りが行われ、列車の中からもお花見ができるほどだとか。
ホーム側からみた駅舎の様子です。
扉、窓はアルミサッシですが、下見板張りの壁など美しい姿です。
ホームよりも一段低いところにある駅舎をホームの上から見てみます。
緑の中に赤いトタン板の屋根が美しく溶け込んでいます。
往来の少ない線路の上をのんびりと歩く猫さんが一匹。
岐阜方面側から見たホームの様子です。
単式島式2面3線のホームを持ちます。単式ホーム側にはホームから一段下がった駅舎の赤い屋根が見えます。名古屋行きのワイドビューひだ号が、轟音を響かせながら駆け抜けて行きました。
飛騨一ノ宮駅で約3時間、前半は太陽の光がじりじりと照りつける夏らしい空でした。しかし、待合室で次の列車を待つうち、空はにわかにかき曇り、やがて大粒の雨が。雨脚はどんどん強まってきて、この先どうしようかなと思案するほどになりました。
待合室のベンチに座って様子をみつつ、とりあえずひと駅進んでみようか、そう決断しました。
2009年8月6日(木)