番外編として、北陸本線です。
北陸号から降りて、初めて北陸の地に足をつけた金沢駅です。
石川県金沢市木ノ新保町に位置する金沢(かなざわ)駅は、1898(明治31)年4月1日、官設鉄道の駅として開業しています。
加賀百万石の金沢の町の玄関口にふさわしく、駅舎は立派です。城下町として和の趣あふれる金沢の町のイメージに反して、駅舎はとてもテクノチックな感じです。その中で唯一和のイメージを持つこの門は「鼓門」といわれ、伝統工芸の鼓をあしらっています。
金沢駅から北へ3つ目、津幡駅です。
石川県河北郡津幡町に位置する津幡(つばた)駅は、1898(明治31)年11月1日に開業しています。
七尾線の起点駅(実際には全車金沢に乗り入れ)である津幡駅には、鉄筋コンクリート製の駅舎があります。
ファサードの屋根の上に掲げられた駅名板です。
角丸の文字には柔らかさがあります。
駅舎のすぐ後ろ側、3、4番線のホームから、レンガ造りの小屋が見えます。
レンガがきっちりと組み合わさって頑丈そうな造りのこの建物はランプ小屋でしょう。
ランプ小屋の妻部分です。
だんだんになったレンガの積み方がすてきです。職人さんのこだわり、でしょうか。
木の扉の上部には建物財産標が見えます。
財産名は「駅灯室」。まさに電気がないころに駅の灯としてに油を保管した部屋だったのでしょう。昭和13年10月、開業からはずいぶんと遅れての建立ということになります。
津幡駅のお隣、倶梨伽羅駅です。
石川県河北郡津幡町に位置する倶梨伽羅(くりから)駅は、1908(明治41)年12月16日に開業しています。
鉄道の撮影ポイントとしても有名な倶梨伽羅峠にほど近いこの駅にも、開業当時の木造駅舎が残ります。
ファサードの様子です。
三角屋根のファサードの脇の丸ポストがレトロな感じです。
ファサード脇にある曲がり屋は下見板張りの壁が美しく、窓の白い目かくしがアクセントになっています。無人駅となっている現在では、おそらく室内は空室でしょうが、もとは駅事務室だったのでしょう。
入口の上部に貼られた建物財産標です。
明治40年12月、開業当時の建物です。開業当時の建物を、改修しながら使っているのでしょう。
島式ホームには待合室があります。下見板張りの壁は白いペンキで塗られています。
待合室の出入り口の上に設置された行き先表示板は、濃紺に白い文字のホーロー製です。
石川県と富山県の境に位置するこの駅は、かつては重要な位置を占めていたのでしょう。駅構内は広々としています。ホームと駅舎との間隔も広く、長い跨線橋がつなぎます。現在は駅前にほとんど民家はなく、荒涼とした感じがあります。
倶梨伽羅駅から4つ目、高岡駅です。
富山県高岡市下関町に位置する高岡駅は、1898(明治31)年1月2日にまず中越鉄道(現・城端線)の駅として開業し、11月1日に官設鉄道(現・北陸本線)の延伸により官設鉄道の駅として開業をしています。
現在のコンクリート製の駅舎は、民衆駅として戦後造られた駅舎です。
※民衆駅:駅舎建設を国鉄と地元が共同で行い、その代わりに商業施設を設けた駅のこと
駅舎正面に掲げられた駅名板です。
水色のJR西日本のロゴと駅名。シンプルだけれどきれいな駅名板です。
現在、駅舎は橋上化されるべく、工事が進んでいます。戦災復興の礎となった民衆駅は、まもなく役目を終えます。
高岡駅からは北陸本線、氷見線、城端線と、多くの路線が発着しています。
氷見線のホームから駅舎への通路の上屋です。半分の縦羽目板張りの妻部分がよい感じです。
氷見線のホームからホーム全体を見渡してみました。
島式4面8線を持つホームは広く、たくさんの側線を持ちます。あずき色の列車が止まるのは氷見線のホーム、白い列車が止まるのは北陸本線のホーム、そして駅舎から一番離れたところに城端線のホームがあります。
駅舎から一番遠いところに車庫があります。はっとりくんのラッピング車とあずき色のキハは、氷見線、城端線で使用される車両です。
高岡駅のお隣、越中大門駅です。
富山県射水市北野に位置する越中大門(えっちゅうだいもん)駅は、1923(大正12)年10月15日に開業しています。
ここにも古い木造駅舎があります。
ファサードの様子です。
三角屋根にブルーの駅名板を掲げたファサードは、新しい感じがします。
駅舎の左側、金沢方面側にあるトイレです。
アイボリーに塗られた下見板張りの壁は、いい具合にはげかかっています。
金沢方面側のトイレなどを撮影していると、はるかかなたからオレンジ色のヘッドライトが見えてきました。
時刻は16時38分。ヘッドライトの正体は大阪駅を出発し約4時間。北の大地を目指してひた走る、トワイライトエクスプレス号でした。
富山方面側から見たホームの様子です。
単式島式2面3線のホームを持ちます。ホームとホームは跨線橋で結ばれています。北側に位置する島式ホームの更に北側には、貨物専用線があります。
越中大門駅の次の次、呉羽駅です。
富山県富山市呉羽町に位置する呉羽駅は、1908(明治41)年11月3日、官設鉄道の駅として開業しています。
ここにも端正な木造駅舎が残ります。
ファサードの様子です。
黒い瓦屋根には赤い瓦の回廊が付きます。入口横には少し凝った形の駅名板が掲げられています。
島式ホームにある待合室です。
白く塗られた下見板張りの壁は、風雪にさらされてはげかけています。
金沢方面側から見たホームの様子です。
単式島式2面3線のホームを持ちます。ホームとホームは跨線橋で結ばれています。
業務委託の駅のようで、女性の駅員さんが案内放送などをされていました。
呉羽駅のお隣、富山駅です。
富山県富山市明輪町に位置する富山駅は、1899(明治32)年3月20日に官設鉄道の駅として開業しています。また、飛越線(のちの高山本線)は、1927(昭和2)年9月1日の開業です。そのほかにも多くの路線の分岐駅でしたが、現在は富山地方鉄道に引き継がれ、地元の人々の足となっています。
富山県の県庁所在地、富山市の中心駅である富山駅には、ステーションデパートを併設する立派な駅舎がります。
正面に掲げられた駅名板です。
高岡駅と似て、明るい空色の駅名板です。
ステンレス製の有人改札からは、ブルーの客車、寝台特急の姿が見えます。
早朝5時半、電光掲示の行き先表示板にも、寝台特急北陸号、夜行急行能登号の掲示が入りました。
2010年3月のダイヤ改正で見納めの風景です。
北陸本線の駅から発着する、七尾線、氷見線、城端線、高山本線を回るための繋ぎ、いわばさしみのつまのような北陸本線の駅舎めぐりの旅でした。
倶梨伽羅駅、越中大門駅、呉羽駅など、無人駅となっていて寂しい感じはします。しかし、その鉄道施設は日本海側の大動脈、北陸本線に似つかわしい立派なものでした。
また、小さな駅の間に点在する金沢駅、高岡駅、富山駅などは、地方都市の駅として、堂々とした立派な姿を見せています。
2009年夏、4泊7日に渡る北陸・飛騨高山をめぐる旅は、古きよき風景を心に刻み、無事終了しました。旅行から戻って手元に残ったのは、寝台特急北陸号の指定席券、北陸フリー切符、青春18きっぷ、そしてムーンライトながら号の指定券の計5枚。
寝台特急北陸号に乗ろうと決めたのは、虫の知らせだったかもしれません。この3月、北陸号は惜しまれつつ引退します。
2009年8月3日(月)・4日(火)・5日(水)