曇天の雨晴を見て、正反対に発車する城端線に乗るために、高岡駅に戻ってきました。
氷見線から一番遠い位置、1、2番線が城端線の発着ホームです。
天井からぶら下がるこんな行き先表示のあるホームに、城端線の列車は停まっていました。
城端線のホームで出発準備をしていたのは、「忍者ハットリくん」列車でした。氷見市出身の藤子不二雄Aさんに因み、代表作の忍者ハットリくんをラッピングした列車です。
高岡駅から約10分、三つ先の戸出駅に到着しました。
富山県高岡市戸出町に位置する戸出(といで)駅は、1897(明治30)年5月4日に中越鉄道の駅として開業しています。
駅には、立派な回廊を持つ木造駅舎が残ります。
ファサードの様子です。
黒い瓦屋根を持つ背の高い建物は、どうどうとした構えです。縦羽目板張りの腰壁と白い壁、庇から天井まで続く下見板張りの壁がとても美しいものです。
ファサードの庇の上に掲げられた駅名板です。
木製の額に力強い楷書体で書かれた文字は貫禄があります。水色に塗られているのは、壁の色に合わせたのでしょうか。塗られたペンキがはげかかっているのもよい感じです。
入口右側、切符売り場の窓口と、正面の改札口です。
自治体への簡易委託駅である戸出駅の窓口では、地元の国鉄OBの方が交代で勤務をしています。
入口左側、待合室です。
ベンチとは別にテーブルが置かれているのは、そこで物産展などを行うためでしょうか。窓の上の壁には、子どもたちの作品と思われる絵が掛けられています。
入口脇の柱に貼られた建物財産標です。
明治30年5月、正真正銘開業当時の駅舎です。
駅舎の脇にはこんな建物。建物の形からおそらくトイレでしょう。新しいトイレができたようで、「使用禁止」の張り紙がしてありました。
ホーム側から見た改札ラッチです。緑色のペンキで塗られた鉄製のラッチは人の手が触れるところが塗装がはげて茶色くなっています。
駅舎と反対側のホームにある待合室です。
下見板張りの木の壁は、駅舎と同じ色に塗られています。
ホームをうろうろと歩いて行くと、跨線橋の階段の下にこんなものを発見。
なんだろう、スキー板かな、と思って近づいてみると、説明書きがありました。「カー・キャッチャー」と呼ばれる鉄道機材らしいです。過走した車両の車輪を受け止めてレールとの摩擦によって停止させる仕組みだとか。急勾配地区の下方に当たる駅や信号所などに常備されているものなのだそうです。
高岡方面側から見たホームの様子です。
対向式2面2線のホームを持ちます。ホームとホームは跨線橋で結ばれています。ホームの花壇にはきれいなお花が咲いています。
戸出駅で1時間44分を過ごし、五つ先の福野駅に到着しました。
富山県南砺市松原新に位置する福野(ふくの)駅は、1897(明治30)年5月4日に中越鉄道の駅として開業しています。
ここ、福野駅にも、開業当時の立派な木造駅舎が残ります。
ファサードの様子です。
戸出駅と同じ黒い瓦屋根に水色に塗られた板張りの壁を持ちます。戸出駅と比べると、回廊もなく、背も低く、若干小振りな感じでしょうか。
ファサードに掲げられた駅名板です。
庇の下の板は戸出駅よりは大きく、字体も個性的です。
城端方面側からみた駅舎本屋の妻部分です。
端正な寄棟屋根の戸出駅に比べ、切妻の福野駅は曲家があったり二階建て部分があったりで変化に富んでいてとてもリズミカルな感じです。上から下まで途切れることのない下見板張りがとてもきれいです。
入口右側、切符売り場の窓口です。
簡易委託駅の福野駅の窓口にも、委託の駅長さんがおられます。
入口左側、待合室です。
壁にぐるりと木のベンチが設えられています。広々としていて、とても清潔感のあふれる待合室です。
入口のドアの脇に貼ってある建物財産表です。
明治30年5月、開業当時の駅舎であることがわかります。
トイレの案内表示板は、レトロなホーロー引きでした。
ホーム側から見た改札付近です。
ホームから一段下がったところに、オレンジ色に塗られた鉄製のラッチがあります。
城端方面側から見たホームの様子です。
対向式2面2線のホームを持ちます。駅舎がある上りホームと反対側の下りホームとは跨線橋で結ばれています。
福野駅で1時間ちょっとの時間を過ごし、四つ先、終着駅の城端駅に到着しました。
富山県南砺市是安に位置する城端(じょうはな)駅は、1897(明治30)年10月31日、中越鉄道の駅として開業しています。
城端線の終着駅にも黒い瓦屋根に立派な回廊を持つ木造駅舎が残ります。
駅前からは、世界遺産である白川郷・五箇山の合掌造りの集落への路線バスも出ています。
ファサードの様子です。
回廊と黒い瓦、終着駅にふさわしいどうどうとした立派な造りです。
ファサードに設置された駅名板です。
純和風の黒い瓦屋根に、ポップな感じの白い板と角丸の文字がかわいらしい感じです。
入口左側、待合室です。少し狭い感じもしますが、きれいに整えられた感じがします。
壁に掲げられた大きな傘には「城端町」と書かれていますが、市町村合併により、その名前は消えてしまったようです(南砺市の町名としては残っているようですが)。
入口のドアの上に貼られた建物財産標です。
明治31年10月、開業より1年遅れての建立です。
ホーム側改札付近の様子です。
列車から降り立って、ほっとして周りを眺めたとき、なんともいえない懐かしい気持ちになります。まるで時間が止まってしまったような、そんな錯覚に陥りそうです。
懐かしさのひとつ、上家の梁に掲げられたホーロー引きの駅名標。
駅舎自体は何度となく補修を繰り返しているのでしょうが、そんな中でこうやって昔からのものを大切に使って行く、そういう気持ちが古くても美しく保つことに繋がって行くのでしょう。
城端駅は海抜123.4米。語呂のよさから有名なのだとか。
駅舎にも、こんな看板が貼ってあります。
城端駅終点側からのホームの様子です。
対向式2面2線のホームをもちます。写真では見えませんが、駅舎と反対側に対向式のホームがあるのです。ホームとホームは車止め手前の構内踏み切りで繋がれています。
全12駅の中で木造駅舎は以外と少なく、この3駅と二塚駅の4駅だけ。でも、その駅舎はどれも昔ながらの立派なものです。黒い瓦屋根とがっしりとした造り。下見板張りの美しい壁。せっかくの美しい木目なのに、何でもかんでも水色に塗っちゃうのはちょっと、と思ったりもするけれど、それもまたペンキのはげ具合がいい感じになっていたり。
もしもこれが春ならば、車窓からステキなチューリップ畑が見えなたかななどと思いながら、今日の宿泊地、富山を目指して高岡行きの列車に乗りました。
2009年8月4日(火)