《のと鉄道・その1》
  
横山駅から1時間弱、のんびり揺られて終点の七尾駅に到着しました。ここから先は、第三セクターののと鉄道にバトンタッチです。
乗換時間はわずかに5分。乗換口で急いで切符を買って、青いキハに乗り込みました。
七尾線が電化された1991年、非電化のまま残された七尾から先を引き継いだのがのと鉄道です。
七尾駅の次の次、田鶴浜駅で途中下車です。
石川県七尾市田鶴浜町にある田鶴浜(たつるはま)駅は、1928(昭和3)年10月31日、国鉄七尾線の駅として開業しています。
駅舎はコンクリート製の平屋の建物で、若干新しい感じです。
ファサードの様子です。機能性重視の駅舎はちょっとつまらない感もあります。
入口脇に掲げられた駅名板です。レンガを積んで白く塗った壁に、塗装のはげかけた文字がいい感じです。
駅舎自体はありきたりなつまらないものですが、入口横に設置された丸ポストはレトロ感漂い、駅にステキなアクセントを与えています。
入口から駅舎内を眺めてみましょう。
入口左側、切符売り場の窓口と改札口です。改札口の上には「建具の街」であることをアピールした幕が貼られています。
入口右側、待合室です。ブルーのプラスチックのベンチの後ろは、木目も美しい木のベンチです。
待合室の角にはこんな風に棚が設えられていて、お花が生けられています。駅舎内の待合室に2箇所と、ホームにある待合室にも、きれいなお花が生けられていました。駅長さんの話によれば、地域の方々が定期的に生けてくださっているそうです。
入口脇に貼られた建物財産標です。開業時よりははるかに新しく、昭和30年の建物です。
ホーム側の改札付近には、こんな看板もかかっています。ホーロー引きの駅名標です。
国鉄時代のものをそのまま大切に使っているのでしょう。
柱にくくりつけるタイプの縦長の駅名標は、なぜか駅事務室の窓ガラスの中に、大事にしまわれていました。お役御免になっちゃったけれど、なんとなく捨てられなくて、という感じでしょうか。そこに掲示した経緯を勝手に想像し、なんとなくにんまりしてしまいました。
駅舎の脇の電柱には、「雪」と書かれたこんな箱が設置されていました。なんだろう、雪国ならではの秘策だろうか、と思い巡らせてみたりします。
ホームに設置された駅名標です。青地に白い文字、これがのと鉄道仕様なのでしょう。
のと鉄道の駅には、駅名の他に愛称がついています。田鶴浜駅は「たてぐのまち駅」です。駅舎の写真を撮る私に、駅長さんが教えてくださいました。何でも町の○○パーセント(すみません、忘れました)が建具屋さんなんだとか。300年の伝統を持つ匠の技が今に受け継がれている町だそうです。
穴水方面側から見たホームです。
ホームは対向式2面2線。ホームとホームは同じように鎧のような跨線橋で結ばれています。
直営駅の田鶴浜駅には駅長さんが常駐しておられます。春ならば能登鹿島駅の桜が美しいことや、明日乗る予定の氷見線の見所など、教えてくださいました。
お話好きの駅長さんのお話を聞きながら1時間ほどを過ごした田鶴浜駅からまた列車に乗って、お隣の笠師保駅で降ります。笠師保駅には小さな木造駅舎があります。
石川県七尾市中島町にある笠師保(かさしほ)駅は、1928(昭和3)年10月31日に国鉄七尾線の駅として開業しています。無人駅であるせいか、事務所側の窓はふさがれています。
ファサードの様子です。
立派な土台に支えられた三角屋根の中に、駅名板が控えめに掲げられています。
入口の上に掲げられた駅名板です。白いアクリル板に駅名が書かれた、ごくシンプルな形です。
ファサードの三角屋根を支える柱の土台です。
幾種類かの石がモザイク模様のように組み合わされていて、なかなか美しいものです。一番上の石にはさりげなく意匠もあって、作った人のこだわりを感じたりもします。
入口からみた駅舎内の様子です。
入口左側、改札の窓口です。無人駅のため、カーテンで閉ざされています。
入口右側、待合室です。窓の下には木製のベンチが設えられています。無人駅のせいか、室内は薄暗く、また人影もなくてとても静かです。
駅舎の入口脇に貼られた建物財産標です。
昭和3年10月、間違いなく開業当時の駅舎です。ここも駅本屋ではなく、待合所なのですね。
駅舎の右側にはも木造のトイレがあります。窓こそはサッシですが、それ以外は開業当時の姿のようです。
トイレに貼られた建物財産標です。
駅舎と同じ、昭和3年10月、開業当時の建物です。
駅舎のホーム側の壁には、ホーロー引きの駅名標が設置されています。これも国鉄時代の置き土産でしょうか。
駅舎をホーム側から見てみましょう。
木の柱とハーフティンバーの壁、に濃紺の駅名標が栄えますね。
ホームの柱には縦長のホーロー引きの駅名標も設置されています。
ホームに設置された駅名標です。鉄製のこの形は国鉄時代のものでしょうか。
笠師保駅の愛称は、「恋火(こいび)駅」です。とてもロマンチックな愛称ですね。
7月下旬に開催される「能登キリコ祭り」の一つである「塩津かがり火恋祭り」がその由来だそうです。
駅前からぐるっと周り、踏み切りを渡って線路の反対側に来ました。ホーム側から駅舎正面、改札付近を見ています。ホームは単式1面1線の棒線駅です。
駅から少し歩くと、海が見えます。
荒くれ者の日本海も、夏はこんなに静かになるんだなぁと思ったり、いや、ここは湾だからだろうか、と思ったりしながら、凪いだ海を眺めました。
ふと空を見上げると、ハングライダーがゆっくりと飛んでいました。
2009年8月3日(月)