《のと鉄道・その2》
  
笠師保駅で43分の時を過ごし、また列車の乗って次の駅、能登中島駅に降り立ちました。
石川県七尾市中島町に位置する能登中島(のとなかじま)駅は、1928(昭和3)年10月31日、国鉄七尾線の駅として開業しています。
駅前広場からとんとんと階段を上った先に、端正な木造駅舎があります。
ファサードを斜め右からみてみましょう。
三角屋根のファサードは、お隣の笠師保駅とよく似た形です。
入口上に掲げられた駅名板です。
白いプラスチックの板に黒い文字のシンプルな形、これもお隣の笠師保駅に良く似ています。
三角屋根を支える木の柱の土台も、お隣の笠師保駅と同じです。石の積み方や意匠まで、そっくり同じ形です。
入口から駅舎の中を見てみましょう。
入口左側、改札の窓口です。壁やカウンターは木目の美しい板張りです。
入口左側、待合室です。こちらもやさしい板張りの壁です。
入口の脇には錆に覆われた建物財産標が貼られています。
昭和3年10月、開業当時の駅舎であることがわかります。能登中島駅の表示は「駅本屋1号」。建物財産標までも、正真正銘の開業当時のものなのかも知れません。
この駅も駅舎ホーム側の壁にはホーロー引きの駅名標が残ります。国鉄時代の美しいものを大切にする気持ちが嬉しいなぁと思います。
対向式ホームから駅舎を眺めて見ます。
木の腰壁にハーフティンバー、黒い瓦屋根、美しく調和がとれています。白いハーフティンバーを、紺色の駅名標がきりっと引き締めています。
駅舎前の庇を支える柱には、木製の、こんな看板が設置されています。ぬくもりのある木の板は、ここが1番ホームであると伝えています。
能登中島駅は側線があり、そこには国鉄時代の郵便車(オユ10)が静態保存されています。
車内に郵便物を区分けするための設備を設けている車両だそうです。今ではここと、東京都国立市の中央郵政研究所と、2両しか残っていない、とても貴重な車両なのだとか。
ブルーの郵便車の前に、ブルーの駅名標が設置されています。隣の柱には縦型のホーロー引き駅名標も残ります。
能登中島駅の愛称は「演劇ロマン駅」。駅近くにある「能登演劇堂」に因んでの愛称だそうです。
ホームを穴水方面側から見てみましょう。
ホームは対向式2面2線。もともとは左側は島式ホームで、3番線まであったようですが、後になくなり、線路は側線となって郵便車などの静態保存がされているのです。
ホームとホームは跨線橋で結ばれています。
40分弱を能登中島駅で過ごし、また列車に乗ってお隣の西岸駅で降りました。
石川県七尾市中島町に位置する西岸(にしぎし)駅は、1932(昭和7)年8月27日、国鉄七尾線の駅として開業しています。
開業当時の木造駅舎は、アイボリーに塗られた壁は長年の風雪に耐え、塗装がはげかかっています。
ファサードの様子です。
ファサードの庇は、屋根の一部を延ばして方杖で支えた一軒(ひとのき)のつくりです。
入口の上の明かり取りの窓に設置された駅名板です。ここもまた、笠師保駅や能登中島駅と同じようにシンプルなつくりです。
駅舎を右側の妻部分から見てみます。
アイボリーに塗られた下見板張りの壁は、経年経過でペンキが剥げ落ち、木材が現れてかえってよい感じになっています。
入口左側、切符売り場の窓口の様子です。
無人駅のため、窓はきっちりと閉められ、カーテンがかかっています。
入口右側、待合室です。窓の下には壁にはりついた形の木のベンチがあります。天井の照明器具の上にはつばめの巣があるようで、天井からはビニール傘がぶら下がっています。
入口の上部に貼られた建物財産標です。
昭和7年8月建立、まちがいなく開業当時の駅舎です。この駅も「駅本屋」ではなく「駅待合所」になっています。
駅舎の右側には木造のトイレがあります。トイレはまちがいなく昭和の香りをさせています。
トイレに貼られた建物財産標です。昭和7年8月、駅舎と同様、開業当時の建物です。
ホーム側からの駅舎の様子です。
ホームから一段低いところにある駅舎は、ホームの際の緑に埋もれる形で、木陰の中に涼やかに佇んでいます。
縦羽目板張りの壁とハーフティンバーと木枠の窓、それに木の柱が支える庇。板壁や窓枠など、カラフルなペンキで塗られてはいるけれど、木のぬくもりはなくなってはいません。
ハーフティンバーの壁には、木製の駅名標が設置されています。黒板に白墨で書かれたようなこの板には、素朴な味わいがあります。緑色の板というのはあまり見ない形ですが、板壁を塗るときにに一緒に塗り替えたのでしょうか。
ホームの際の木立の中に埋もれるように建つ柱には、縦長のホーロー引きの駅名標も見えます。
駅舎と反対側のホームに設置された駅名標です。こちらも国鉄型の駅名標のようです。
西岸駅の愛称は「小牧風駅」。駅周辺の高台を「小牧台」と呼ぶことからつけられた愛称だそうです。
七尾方面側から見たホームです。
ホームは対向式2面2線。ホームは深い緑に覆われています。鎧のような跨線橋はなく、ホーム間の行き来は構内踏み切りでします。
七尾線から転換されたのと鉄道は、国鉄時代の古きよきものたちが大事にされている路線です。
小さなキハには女性の車掌さんが乗っていて、見所などの案内をしてくれます。4つの駅で乗り降りを繰り返す間、3度、同じ車掌さんとめぐりあいました。能登の魅力などをはなしてくださった後、駅舎を見たくて何度も乗り降りを繰り返すことなど、不思議そうに耳を傾けておられました。
寝台特急北陸号の続きの旅は、天気予報に反した晴天の下、またしても古い駅舎とそれを見守る人々との出会いの旅になりました。
西岸駅からは折り返し、明日に旅に備えて北陸本線の高岡駅に向かいます。
2008年8月26日(火)