金沢の駅で北陸の電車たちをいくつか眺め、鼓門を眺め、いよいよ本日の予定、能登半島の駅舎巡りに出発します。
能登半島に向かう七尾線は6時59分、4番線から出発します。
津幡駅を始点とする七尾線ですが、全ての電車は金沢駅から発車します。
4番線に停まっているのは、415系列車です。グレーと水色の先頭車が、グレーとピンクの中間車を挟み込む塗りわけは、ちょっとユニークです。
415系列車といっても、113系に交流機器を装備した改造車だそうで、セミクロスのボックスシートにはなんともいえない懐かしさを感じました。
津幡駅の次の次、本津幡駅が今回の旅行の最初の訪問駅です。
石川県河北郡津幡町にある本津幡(ほんつばた)駅は、1898(明治31)年4月24日、七尾鉄道の津幡仮停止場として開業、一旦廃止後、1902(明治35)年6月25日、本津幡駅として再開業しています。
駅前は広いロータリーになっていて、駅舎正面の姿はバス停留所の屋根に隠れ、残念ながらよく見えません。
正面右斜めに駅舎を見てみます。
下見板張りの壁はアイボリーに塗られたものの、豪雪による影響からかだいぶ塗装がはげ、逆にそれがいい感じになっています。
寄棟屋根に乗った黒光りのする瓦は、北陸地方でよく見られるものです。冬の豪雪に耐えるための、強い瓦なのかも知れません。
駅舎正面、ファサードです。
小さな庇を持つ入口には、ドアの横に駅名板がかかります。JR西日本のコーポレートカラーのあざやかな水色のロゴマークを冠した駅名板は比較的新しいのでしょうか、面白みにかけるデザインです。
しかし、屋根まで続く板張りの壁は実に美しいものでした。
停留所の屋根は入口まで繋がっていて、乗客には嬉しい配慮がされています。
待合室にあるこの機械は、切符の券売機です。
タッチパネルが多用される首都圏の券売機を見慣れれた私には、駅の立ち食い蕎麦屋さんの券売機みたいで、なんだか新鮮な感じでした。
簡易委託の本津幡駅の待合室には、何箇所かお花が生けてありました。
バケツの中にさりげなく投げ入れたこんな形のお花にも、利用者の方々の暖かな思いがこめられているようです。
駅舎本屋に張られた建物財産標です。明治31年4月、まちがいなく開業当時の駅舎です。
ホームに設置された駅名標です。JR西日本のホームでよく見られる、標準的なタイプです。
金沢方面側から見たホームです。
ホームは対向式2面2線。長い立派なホームです。ホームとホームを繋ぐ跨線橋はがっちりとトタンで覆われ、これも雪国ならではの仕様なのかなと思いました。
列車が近づいたときの接近メロディーは「われは海の子」で、しっかりフルコーラス流れるのには楽しかったりびっくりしたりでした。
(メロディーは季節によってかわるそうです)
本津幡駅で38分の時を過ごし、また下り列車に乗って、二つ隣の宇野気駅に到着しました。
石川県かほく市宇野気にある宇野気(うのけ)駅は、1898(明治31)年4月24日、七尾鉄道の駅として開業しています。かほく市の代表駅で、乗降客もそこそこ多く、朝のラッシュも重なってか賑わった雰囲気でした。
コンクリート造りの平屋の駅舎は比較的新しく、これといった特徴のない駅舎です。
正面ファサードと、入口に掲げられた駅名板です。オレンジ色の文字が明るく、元気が出そうな感じです。
入口の扉の脇に貼られた建物財産標には、昭和41年3月と表示されています。新しいとは言っても40年以上昔の建物であるということになります。
下りホームに設置された駅名標です。JR西日本の標準タイプは、水色がさわやかです。
金沢方面側から見たホームです。
ホームは対向式2面2線。特急サンダーバード号も停車するだけあって、立派なホームです。
宇野気駅で30分の時を過ごし、お隣の横山駅に降り立ちました。
石川県かほく市横山にある横山(よこやま)駅は、1901(明治34)年6月15日、七尾鉄道の駅として開業しています。
屋根の形こそ違いますが、下見板張りの壁と小さな庇を持つファサードが、本津幡駅とよく似た感じです。
正面ファサードです。
塗りのはげかかった板張りの壁に、赤いポストがよく似合います。小さな庇を持つ入口の周りには、植木やフラワーポットなども置かれていて、美しく保たれた印象を受けます。
駅舎内の待合室の様子です。
室内は無人駅とは思えないほどきれいに整えられています。おそらく地域の住民の方々の手によって管理がされているのでしょう。人々の温かい気持ちが伝わってくるようです。
入口の脇に貼られた建物財産標には、昭和4年3月と刻まれています。本津幡駅と比べたら、かなり新しい建物ではあるようです。
どう見てもこの建物は駅舎なのに、財産標は「待合所」なのは、無人駅だからでしょうか。
駅舎の左側には、木造のトイレがあります。
板張りに木枠の窓、切妻の屋根にはどっしりとしたした屋根瓦。建物としての美しさは天下一品です。
トイレに貼られた建物財産標です。昭和12年5月の建造物だそうです。
駅舎をホーム七尾方面側から見てみます。
何重にも重なった切妻の屋根がとてもリズミカルです。白いペンキで塗られた下見板張りと押縁下見板張りの壁に重厚な黒い屋根瓦が、なんともいえない美しさです。
ホームから見た改札付近です。
屋根から張り出した庇を支える方杖がさりげなく美しさを演出しています。
駅舎がホームよりも低く、改札の前が小さな階段になっているのは、非電化時代の低いホームをかさ上げした名残でしょうか。
下りホームに設置された駅名標です。ここもJR西日本の標準タイプです。
ホームを七尾方面側から見てみます。
対向式2面2線のホームを持ちます。ホーム同士は完全に覆われた跨線橋が繋いでいます。駅舎側が本来の出口ですが、反対側のホームからも乗降ができるようになっています。
美しい木造駅舎の横山駅で37分の時を過ごし、また列車に乗りました。列車は七尾線の実質的な終着駅、七尾駅をめざします。
能登半島を走る七尾線には20ほどの駅があります。その中で昔ながらの姿を留める本津幡駅と横山駅を駆け足で見てきました。
どちらの駅も、板張りの壁と、重厚な瓦屋根を持つ、美しい木造駅舎でした。駅名板や駅名標など、国鉄が分割されたときに急いで取り付けたのかな、と思えるものもありましたが、それ以外は美しく保たれていました。がっちりと囲まれた跨線橋や、傷みの激しい板張りの壁など、豪雪地帯ならではの姿も感慨深く観察させてもらいました。
さてこれから、能登半島の更に先を目指します。
2009年8月3日(月)