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東京口のみかん電車引退まで秒読みに入った2月のある日、みかん色のグリーン車に乗ろうと思います。
みかん電車はあまりにも身近すぎて、グリーン車など考えもつかなかったのですが、みかん電車が引退してしまったらもう決して乗ることはできないことに気付き、一度は乗っておこうと思い立ちました。
東京→熱海 のグリーン券を買って、東京駅に停車中の熱海行き快速アクティ、このグリーン車に乗り込みます。
みかん色の車体に、グリーン車を現す四葉のクローバーのステッカー、ここがグリーン車への入口です。
細身のドアから乗り込むと、デッキになっていて、特別車と普通車との一線を画しています。
戸袋の所の正方形に近い窓は、車掌室でしょうか。
乗ったのは「サロ110−1233」。中間車両の2等車を現します。
デッキから客室を眺めてみると、こんな感じです。
シートはそれほど広くはなく、特別車両としては快適とはいえないのではないでしょうか。
シートはセミリクライニングで、俗に言う「バッタンシート」といわれているものです。つまり、体重をかけると倒れるけれど、力を抜くと「バッタン」と元に戻ってしまう、そういう代物です。
それでも赤いモケットシートと白いヘッドカバーは、十分に二等車の貫禄を見せていると思います。
空いている窓際のシートに着席します。
ひとつのシートにひとつの窓、ひとつのテーブルがくるようにデザインされています。
テーブルは少し小さく、文庫本を乗せる程度のスペースしかありません。これではここで駅弁やら飲み物やらを広げるのはちょっと難しいかも知れません。
前のシートに備え付けてあるポケットには、さりげなくモバイルsuicaのパンフレットが入れてあります。
みかん電車引退後、グリーン券の扱いはsuicaに移行するのでしょう。デジタル時代のsuicaのペンギンさんにも、アナログなみかん電車はお荷物のようです。
東京駅を出発したサロは、窓の外を眺めたり本を読んだりしているうちに、終点の熱海駅に到着しました。
初めて乗ったみかん電車のサロは、次の運転を控えて、ゆっくりと車両基地に入って行きました。
熱海駅ではJR東海管区のみかん電車がまだまだがんばっています。
西行きのホームでは、JR東海の東海道線、島田行きが出発の準備を整えています。
熱海駅で一旦改札を出て、駅周辺を散策したあと、またホームに戻ってきました。
ホームに停車中の東京行きのみかん電車は、さっき東京駅から乗ってきたみかん電車かも知れません。
この列車の普通車に乗って、東京まで帰ろうと思います。
熱海から乗ったみかん電車の先頭車両は、こんなふうにがらがらです。ボックスシートのセミクロスシートが、先ほどの赤いモケットシートと随分と違う雰囲気なのは、シートの色やうるさい中吊り広告のせいでしょうか。
しかし、この風景もまもなく見納め。そう思って写真に記録します。
熱海駅を出発したみかん電車は、途中駅の国府津駅で、快速アクティを先に通すためにしばらく停車します。
2月とは思えない小春日和の中、柔らかな日差しを浴びてみかん電車も暖かそうです。
まもなく引退してしまうみかん電車のグリーン車に、最後に一度どうしても乗りたくて熱海までの旅をしました。
唯一東京口で活躍したサロ110は、東京口からのみかん電車引退で、廃車となるのでしょうか。
最新型のE231のグリーン車に比べれば、ぼろいイメージはぬぐいきれません。それでも赤いモケットシートには、もう何十年も特別車両の任を担ってきた誇りが感じられました。
グリーン券もsuicaの時代になれば、磁気式のグリーン券ももう見納めになるでしょう。楽しい旅の思い出を乗せた切符の姿を、ここに残しておこうと思います。
2006年2月25日(土)