《画像クリックで大きくなります》
東京口のみかん電車が引退してしまってから、3週間強の日数が過ぎました。
春だし、そろそろまた旅に出ようかなと考えています。引退してしまったみかん電車、首都圏近郊で、あのコに会えるところはないかな、と思い巡らせた結果、栃木県の小山駅から出る両毛線に思い至りました。今日は春爛漫の両毛線に乗ろうと思います。
小山駅に到着後、他の路線から遠く離れた地下にひっそりと佇む両毛線のホームに到着しました。ホームで待っているのはきっと115系のみかん電車。しかしその期待は裏切られ、吾妻線の旅で乗った上越線と同じ、107系列車でした。
列車に乗り込んで、車内を見回していると、ドアのそばにこんなプレートが貼ってあるのが見えました。
同じ関東地方でも、冬の厳しさは比べ物いならないんだな、そんな風に思いました。
小山駅を出て一つ目、思川(おもいがわ)駅です。下車はせず、列車の中から駅名標だけを撮影しました。
思川とは、鹿沼市、栃木市、小山市などを流れる利根川水系の川の名前なのですが、その名前を聞いただけでなんとなくロマンチックな気持ちになれます。
次の栃木(とちぎ)駅は、駅舎百選に選ばれるようなとても趣のある駅舎でしたが、近年建替えられてしまったということなので、今回は通り過ぎることにしました。
小山駅から3つ目、大平下(おおひらした)駅で降りることにしました。駅舎自体はこちらも最近建てなおされたようで、新しくきれいな駅舎でした。
かつてはそこそこ大きい駅だったようで、対向式のホームがあります。しかし、そこに敷かれているはずの線路は今は無く、従って反対側のホームへの跨線橋は、門が閉じられ、渡れないようになっていました。
大平下駅の程近くに、東武日光線の新大平下駅があり、そちらの方が便利なので乗客の足は遠のいてしまったのでしょうか、両毛線の大平下駅は閑散としてしまっているようでした。
駅周辺を少し歩いてみることにしました。周辺は農村地で、そこに建つ農家のおうちはどこもきれいなお花でいっぱいでした。また、ぶどうの産地でもあるのか、「ぶどう狩り」の看板も目につきます。
駅を出て、高崎方面に少し歩くと、踏切があります。その近辺でぶらぶらしていると、ホームに列車が入線するのが見えました。小山方面からやってきたその列車は、115系のみかん電車でした。
三週間前に見納め(型は違うけれど)になったみかん電車、ここで会うことができました。車体はきれいに磨かれて、春の日差しを浴びてピカピカと輝いています。
大平下駅から列車に乗って、次の岩舟(いわふね)駅で降りることにします。
黒い瓦屋根に白い壁、シンプルでこじんまりとした駅舎ですが、白木の駅名標に趣があります。出発前にネットで調べた情報では、もっと古い建物でしたが、実際には最近建替えられているようで、まだ新しくきれいです。
その後の調査では、訪問の僅か10日前、3月30日に新しい駅舎が完成、開業したそうです。古い駅舎を見られなかったことは、ちょっと残念でした。
駅舎を背にして駅前の様子を見てみます。駅の周辺には、こんな風に「自転車預かり所」と看板を掲げた建物が多く見られます。駅前に自転車が溢れかえっている都会の駅周辺を見慣れている私には、なんとも新鮮な光景でした。
再び高崎方面行きの列車に乗るために改札を入ってホームに出ます。小山方面からやってきた列車は、115系のみかん電車でした。
ホームの中央、手入れの行き届いた植え込みの緑とマッチするみかん電車です。
高崎行きに乗り込んでボックスシートに座り、次はどこで降りようかと考えます。
佐野駅で降りてラーメンでも食べようか、それとも個性的な駅舎を持つ足利駅で降りて、足利学校の散策でもしようか、と。しかし、つらつらと考えるうちにボックスシートの心地よさに負けてついついうとうと。列車はいつのまにか、佐野(さの) → 富田(とみた) → 足利(あしかが) → 山前(やままえ) → 小俣(おまた) と通り越して、「次は桐生(きりゅう)です」のアナウンスが聞こえてきました。
栃木県を抜けて群馬県に入った最初の町、桐生は、比較的大きな規模の町だけに、駅舎も立派です。
駅前で桐生の名物だと言ううどんを食べて腹ごしらえ。またホームに戻ります。
島式2面4線の大きな駅は、わたらせ渓谷鐵道との共同駅です。ホームの隅っこに、足尾銅山を思わせるあかがね色の気動車が停まっています。
旧国鉄足尾線を引き継いだ第三セクターのこの路線は、主にすばらしい景観を誇る渡良瀬渓谷を走る観光列車、イベント列車として、活躍しています。
桐生からまた列車に乗って、お隣、岩宿(いわじゅく)駅で降ります。
改札を抜けて外に出て、駅舎を眺めてみました。1935(昭和10)年にできた古い木造建築の駅舎です。晴れ渡った青い空に、赤い瓦屋根がひときわ映えます。三角形のファサードの下、ハーフテンバーの白い壁に掲げられたホーロー引きの駅名標が、なんともいえない風情を醸し出しています。また、良く見ると、付け庇を支える柱の土台は、凝った石積みになっています。
もちろん何度かのリフォームをしての姿ではあると思います。丁寧に手入れをしながら大切に使う、関係者の方々の駅への愛情を感じます。
ホーム高崎方面側から、小山方面側を眺めてみました。対向式2面2線のホームです。
小山方面行き1番線に見える駅舎本屋の赤い屋根と、高崎方面行き2,3番線に見える待合室。そして白い跨線橋。どれもが美しくバランスをとっています。また、本屋、待合室に掲げられた番線の表示も、青いホーロー引きで、さりげなくよい感じを演出しています。
岩宿駅から、小山行きのみかん電車が発車しました。
屋根の上を薄っすらと、春爛漫の桜がピンク色に染めています。
岩宿駅からまた列車に乗って、お隣の国定(くにさだ)駅で降ります。
国定駅の駅舎は、1925(大正14)年からの古いものです。黒い瓦屋根と、入口、付け庇の上に掲げられた青いホーロー引きの駅名標。窓などはサッシに替わり、リフォームもされているようですが、それでも昔からの風格が漂っています。
対向式2面3線のホームから駅舎の本屋を見てみます。
本屋の黒い瓦屋根とその隣の赤い瓦屋根。ホームに置かれた白いプランターと本屋壁際に並ぶ赤いプラスチックのベンチ。どれをとっても絶妙なコントラストだなと思います。
高崎行きのホームで列車を待ちます。
ホームにある駅名表の周りには植え込みがあり、その一角に植えられたかわいいピンクの海棠(かいどう)が、固いつぼみを開き始めていました。
今回下車した両毛線のどの駅にも言えることなのですが、ホームには列車を待つ人々の心を和ます緑の木々が必ずありました。手入れの行き届いた植え込みから、駅を見守る人々の温かさが伝わってきたように感じました。
国定駅からまた列車に乗って、高崎駅を目指します。
途中、伊勢崎(いせさき) → 駒形(こまがた) → 前橋大島(まえばしおおしま) → 前橋(まえばし) → 新前橋(しんまえばし) と魅力的な駅舎もあったけれど、日も暮れかけてきたので通過することにします。どうやら両毛線の終着駅は新前橋のようですが、そのまま高崎駅まで乗り入れて行くようです。
終点高崎駅で、国定駅から乗ってきた107系列車と、上越線を行くみかん電車が仲良く並んだ風景です。
両毛線はもともと、両毛地区で生産される生糸や織物を輸送することを目的として作られた路線だそうです。そういえば途中下車した桐生も、織物の盛んな地域でした。
両毛線の駅舎は個性的だということで知られています。しかし、近年、その代表の栃木駅や佐野駅など、魅力的な駅舎がどんどん建替えられてしまっています。老朽化の問題など、時代の流れでしかたないとはわかっていても、残念な気がしてなりません。
2006年4月9日(日)