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鉄道の日記念切符の2回目は、草津温泉沿線の吾妻線に乗ろうと思います。切符はあと2回分残っているので、今度の旅は相棒と一緒に出かけようと思います。
まず東京を抜けて高崎まで行かなくてはならないので、時間の短縮を狙って湘南新宿ラインを利用することにします。加えて道中長いし、相棒もいるし、ということで、奮発してグリーン車に乗ることにしました。
高崎行きの湘南新宿ラインはE231系。ダブルデッカーの2階の席を確保して、旅は始まりました。いつもよりも高い視線は、ちょっぴり優雅な気持ちになります。
湘南新宿ラインは東京を抜けて大宮から高崎線に入ってゆき、約2時間半の後、初めての高崎駅に到着しました。
たくさんあるホームをあちこち散策しているうち、妙に騒がしいホームに出くわしました。みんなカメラを持って東京方面を見ています。なんだろう、といっしょになって覗き込んでいると、やってきたのは、ボンネット型の特急列車「なつかしの特急白山号(489系)」でした。
思いがけずのボンネット列車は、高崎から信越線に入って、横川駅を目指して行きました。
白山号でごった返すお隣のホームには、さりげなくみかん電車が停まっていました。もしかして、あれに乗れる?と一瞬期待は高まります。
みかん色の115系列車です。
草津に行くならば高崎駅から吾妻線です。しかし、次の発車までには1時間近くも時間があります。吾妻線は高崎を出ると途中渋川まで上越線と平行して走ります。それならば、一足早く上越線に乗って渋川まで行ってみようと考えました。
みかん電車に乗れるのかな、そんな期待とは裏腹に、やってきたのはこれ、日光線と同じ107系列車でした。
ちょっとがっかりしながら、上越線の水上行きに乗り込みます。
高崎から上越線に乗って、高崎問屋町 → 井野 → 新前橋 → 群馬総社 → 八木原と進み、上越線と吾妻線の分岐駅、渋川駅で降ります。吾妻線到着まで、まだ40分ほど時間があるので、一旦改札を出ることにします。
ここ渋川駅は、伊香保など有名な温泉街の玄関口に当るようで、駅前もきちんと整備され、バスが頻繁に出入りしています。
黒い瓦屋根と三角のファサード。その下のルーバーの窓に掲げられたまるい時計。そして、屋根の上に乗っかった大きな駅名標。どれもどっしりと落ち着いた感じがします。
何の予備知識も無く、ただ時間つぶしのために降りた駅の駅舎は、思いがけずのよい感じの駅舎でした。
そろそろ列車が来る頃だよ、と改札を入ってホームに出ました。吾妻線のホームに行くと、高崎方面から列車がやってきました。
そうそう、吾妻線はみかん電車が走っているんです。東海道線の113系とはちょっと違う、115系列車。平地を走る湘南電車よりは力持ちなのが自慢です。
車窓の風景は渋川を出るとまもなく里山の風景に変わります。
刈り取りを終えた稲は竿にかけられて天日干しされ、太陽の光を浴びておいしいお米になろうとしています。
渋川を出て、金島(かなしま) → 祖母島(うばしま) → 小野上(おのがみ) と進んでゆきます。
これは列車の中から撮影した小野上駅の駅舎です。赤い瓦屋根と白の下見板張りの壁が、さりげなくおしゃれな感じを醸し出しています。
小野上を出ると、小野上温泉 → 市城(いちしろ) → 中之条(なかのじょう) → 群馬原町(ぐんまはらまち) → 郷原(ごうはら) と進んでゆきます。
ここでも列車の中から郷原駅の駅舎を撮影しました。この方向からだとごくありふれたものに見えますが、正面からみると、門のような形をしています。
手前側に見えるのは、ランプ小屋でしょうか。
郷原を出ると、矢倉(やぐら) → 岩島(いわしま) と進み、川原湯温泉(かわらゆおんせん)駅に到着します。相棒が、温泉もあるし、というので、ここで下車することにしました。
列車を降りて、とりあえずあたりを眺め渡します。対向式2面のホームと二線を持つ交換可能な駅です。
列車が到着したホームから反対側のホームを眺めます。ホーム中央に待合室があります。小野上駅の駅舎同様、赤い瓦屋根に白い下見板張りの壁を持つ、かわいらしい建物です。
赤い屋根、白い壁が、周辺の木々の緑に溶け込んでいます。
改札を出て駅舎を眺めてみます。
1946(昭和21)年に開業されたこの駅は、湯治場の雰囲気を色濃く残す「川原湯温泉」への玄関口です。周辺の山なみと木々の緑の間に、黒い瓦屋根の木造の駅舎がしっとりと馴染んでいます。
しかし、当地には「八ツ場(やんば)ダム」建設の計画があり、1967(昭和52)年着工以来、今も工事が進められています。ダムが完成したとき、吾妻線の線路、岩島〜長野原草津口といっしょに、この趣のある駅舎も湖底に沈むことになるそうです。
駅舎を離れ、周辺の温泉街を歩いてみることにしました。
駅舎を背にして右側にしばらく歩くと、温泉街へのゲートがあり、そこを入るとまもなく川の流れる音が聞こえてきます。吾妻線とほぼ平行に流れる吾妻川の支流、大沢川です。
水の流れる音を聞きながら、川に架かる橋を渡りしばらく行くと、道は急な坂道となり、その両側には温泉宿が現れ、温泉街になります。「温泉街」と言っても、観光地の華やかさはなく、長逗留をしつつ、疲れを癒す、湯治場という言葉がふさわしい温泉街です。
ちょうど急な坂を上り切ったあたりに、「共同浴場王湯」と看板を掲げたこんな建物があります。入浴料は大人一人300円。
ひなびた感じのこの温泉街、その歴史は古く、今からおよそ800年前、源頼朝によって発見されたと伝えられています。
しかし、歴史ある温泉街もまた、近い将来、湖底に沈むのです。
湯治場をめぐって駅にもどってきました。次の列車に乗ってお隣の長野原草津口を目指そうと思います。
交換可能な川原湯温泉駅では、上り高崎行きと下り長野原草津口行きとがなかよく並びます。一足先に出発した高崎行きを見送って、長野原草津口行きに乗り込みました。
川原湯温泉駅から列車に乗って、お隣の長野原草津口駅で降ります。
吾妻線にはこの先、群馬大津(ぐんまおおつ) → 羽根尾(はねお) → 袋倉(ふくろぐら) → 万座・鹿沢口(まんざ・かざわぐち) → 大前(おおまえ) と進むのですが、この先まで行く列車の本数はがくんと減ります。特急列車の終着駅である万座・鹿沢口駅までは半減くらいですが、終点の大前となると、吾妻線の終着駅でありながら、一日往復4本しかありません。
行ったはいいけれど帰れなくなっちゃうと困るので、吾妻線の旅は5駅を残してここ、長野原草津口駅で終わることにしました。
ここ、長野原草津口は、草津温泉の玄関口になります。草津温泉までゆくにはここから更にバスやタクシーの乗らなくてはなりません。
115系のみかん電車からは、たくさんの観光客の方々が降りてきました。ここからまた、温泉を目指して歩くのでしょう。
川原湯温泉駅から乗ってきた115系みかん電車は、もう方向幕を上り高崎行きに変えて出発の準備を完了しました。駅前でお茶を飲んだりしてしばらく休んだあと、再びこの列車に乗って、高崎駅に戻ります。
こうして鉄道の日記念切符の旅は終わりました。
伊東線の旅のあと、なかなか天候がすぐれず、最終日前日まで持ち越してしまいました。今日、吾妻線の旅も、決して好天に恵まれたわけではありません。空はどんよりと曇り、何度が雨粒も落ちてきました。
でも、それはそれなりに、楽しい旅になりました。
2005年10月15日(土)