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日光から宇都宮に戻り、宇都宮線で黒磯方面に二つほど行って、宝積寺(ほうしゃくじ)駅で降ります。
北関東の旅2日目は、烏山線に乗ろうと思います。
宝積寺から烏山まで、8つの駅を結ぶローカル線には、宝積寺以外の7つの駅に、七福神が関連付けられています。
ゆっくりと走る気動車に乗って、宝の山を探してみたいと思います。
宝積寺駅で発車を待っていたのは、キハ40系1000番台。白地にグリーンのロールカラーは、「烏山色」と呼ばれています。
列車の一番後ろから車内に乗り込みます。
中の様子はこんな感じ。首都圏の山手線などと同じロングシートなのに、とても広く感じるのは、ドアの数が少なく、ひとつのシートが長いからでしょうか。何気なく座った赤いシートは驚くほどふかふかで、とても座り心地の良いものでした。
シートにすわって人心地つくころ、列車はがたんと音をたてて動き出しました。車内には気動車特有の油のにおいが立ち込め、列車がゆれるたびに車体がギシギシと悲鳴を上げています。
うるさいしのろい、でも、乗り心地は最高でした。
列車の行き先表示板には、こんなにかわいらしいサボが入れられています。
列車は宝積寺を出ると、下野花岡 → 仁井田(にいた) → 鴻野山(こうのやま) → 大金(おおがね) → 小塙(こばな) → 滝(たき) → 烏山(からすやま) と、7つの駅、20キロ強を、約40分かけて進んでゆきます。
宝積寺駅を出てから約40分。列車は終点の烏山駅に到着しました。。
改札を出てみることにします。
空は今にも泣き出しそうにどんよりと曇っていますが、ブルーの瓦屋根がとてもさわやかな感じがします。
1923(大正12)年開業当時の駅舎ですが、開業当時にあったドーマー窓はなくなってしまったようです。
駅舎正面に向かって右側に、団体専用でしょうか、通常の改札口は別に改札口があります。
1979(昭和54)年、JRがまだ国鉄だった頃、上野駅を出発したミステリー列車、「銀河鉄道999号」の終着駅が、ここ烏山駅でした。あのときの乗客は、この改札を出たのかもしれません。
団体専用改札口に、列車に向かって座っていたのが、このカエル君です。
烏山を旅立った旅行者が、またここに無事に帰ってくるように、見守っているようです。
烏山駅からまた列車に乗って、少しずつ戻ることにします。
烏山駅から3つ目、大金駅に入線間際のキハです。
列車ホームに到着すると、駅員さんが運転手の傍に近寄って行きました。二言三言言葉を交わしたあと、駅員さんは運転手さんから何かを受け取り、踏切を渡って反対側へやってきました。そのとき駅員さんが持っていたのがこれ、タブレットです。
単線の路線で、列車がかち合わないように、通行手形の役割をするのがこのタブレットです。タブレットをすれ違う列車同士が交換することで、一方が線路上を走っているとき、もう片方は走れないようにするのです。
しかし、駅員さんいわくでは、これはもう観光目的の形式的なものだそうです。実際には自動で制御されているので、必要ないのだとか。
現に、ひっくり返した裏側にはタブレットはなく、かつてはタブレットがはまっていたであろう形にぽっかりと穴があいていました。
やがて反対側からも列車がやってきて、下り烏山駅行きと、上り宝積寺駅行きが仲良く並びました。
一旦改札を出ることにします。
ここ、大金駅は、その名前から縁起の良い駅として知られています。特に宝を積む寺、宝積寺駅とセットで、宝積寺←→大金 の切符がよく売れるそうです。
駅舎は終点烏山と同じように、ブルーの瓦屋根がさわやかです。
大金駅で懐かしい風景を見せてもらったあと、また列車に乗って二つ先の仁井田(にいた)駅で降りることにしました。
ここでもまた、改札を出てみました。
駅舎はここも烏山駅と同じブルーの瓦屋根です。切妻屋根に大きな付け庇がゆったりした感じを与えています。
仁井田駅で降りて、次の駅まで一駅分、沿線を歩いてみようと思います。
沿線のあぜ道と、少し離れた大きな道路を交互に歩きながら、少しずつ次の駅に近づいて行きます。仁井田駅から30分ほど歩いた頃、踏切にぶつかり、小さな川に架かった鉄橋に出会いました。さっき乗ってきた列車とすれ違った下り列車がそろそろくる頃かな、としばらく橋の近くに佇みます。
まもなく、一輌編成のキハがやってきました。
後ろ側、ビール工場を囲む濃い緑に、烏山色のロールカラーが溶け込んでいます。
左手にビール工場を見ながら宝積寺方面にまたしばらく歩きます。
やがて前方に小さな駅が現れました。ホームの上に屋根とベンチがあるだけで、駅舎のない、下野花岡駅です。
ここから上り宝積寺方面行きに乗ります。
下野花岡駅から乗ったのは、宇都宮直通列車でした。
宝積寺駅をゆっくりと見られないのは残念だったけれど、これからの道中も長いし、と思い、宇都宮行きに乗り込みました。
終点宇都宮駅到着後、しばし羽根を休める、キハです。
烏山線でのキハの旅はこれで終了です。いつ崩れるかの空模様もなんとか持って、どんよりしてはいるけれど極端に暑くも無く、とても過ごしやすい一日でした。
歩き詰めの体に心地よい疲労感を感じながら、宇都宮駅の改札を出ます。餃子の街、宇都宮だけに、あちこちに餃子の看板が見えるけれど、食欲よりも疲労感が勝って、お店に立ち寄るのはやめにしました。北関東の中心都市だけあって駅舎も近代的です。
北関東の二日間の旅。国際的な観光地の日光線と、人々が生活する空間の方が多くて観光地にはなりきれない烏山線。どちらもそれぞれ良い味出してるなと思いました。
非電化の烏山線の沿線には「JR烏山線を利用して電化を実現しよう」という看板が掲げられています。しかし、私には、のどかな田園風景の中を、ディーゼルの煙を吐きながら発車してゆくあの姿がとても愛しく感じられるのでした。
2005年9月20日(火)