駅には様々な「部品」がある。目立たずひっそりと佇む部品たちにも、それぞれにそれぞれの役目がある。そんな「部品」たちにスポットを当ててみたいと思う。
■駅名板
列車に乗りに駅に行く。駅に行って、最初に目に入るのが、駅名が書かれた板、駅名板。実際のところ、この板の正式な呼び名は知らない。ホームに立っている駅名が書かれた看板を「駅名標」というが、それとは区別したくて、勝手に駅名板とよんでいる。ただ単に、駅名を書いた板だが、地域によって、路線によって、特徴があったりして面白い。
■駅名標
同じ駅名が書かれた板でも、こちらはホームに設置されているもの。今いる駅の駅名と、前後の駅の駅名とが書かれているのが一般的。柱にくくりつけられた細長いタイプのものも駅名標のひとつ。色やデザインは会社によって異なり特徴がある。最近は樹脂製のものが多いが、中に昔ながらのホーロー引きのものを見つけると、嬉しくなる。
■洗面台/水飲み場
昔、蒸気機関車が列車を引いていた頃、洗面台は駅の必需品だった。なぜなら、長旅を終え、蒸気機関車のすすで汚れた顔をさっぱりと洗い流すため。今ではほとんど使われることのないであろう洗面台だが、その姿を見るたびににぎやかに行き交う人々の声が聞こえてくるような気がする。
■丸ポスト
駅舎と赤いポストはよく似合う。それがレトロな丸ポストだったりすると、いっそうのこと。いつまでも残して欲しいもののひとつだ。
■ファサード
建物の正面のことをファサードという。そこは建物の顔だ。多くの人々を出迎え、見送る駅舎の正面出入り口、そこが駅舎のファサードだ。歴史ある西洋風の建物も、開業当時からの古い木造駅舎も、ファサードにはりんとした美しさがある。
■木のぬくもり
木造ならではの木のぬくもり。羽目板張りの壁、木製のベンチ、木製のカウンター、木製の柱、木製の窓枠、そして木製の改札ラッチ、その他諸々。人々が触れるたびに丸みを帯び、やわらかくなって、更にぬくもりが増す。
■意匠
意匠とは、建物の飾りのこと。もちろん駅にとってどうしても必要なものではない。だが、必要のない意匠だからこそ、そこに作った人の愛情を見ることができる。丹精込めて刻まれた意匠を持つ駅舎は、そこはかとなく美しい。
■モニュメント
節目節目の記念に作られるモニュメント。線路に関わる駅だけに、鉄道敷設にまつわる記念碑が多い。開業記念のモニュメントを見るたびに、多くの人々の苦労と喜びに思いを馳せてみる。
■鉄道施設
駅の構内には列車を走らせるために様々な施設がある。蒸気機関車にはなくてはならない給水塔だったり、列車に灯をともすための燃料を貯蔵するランプ小屋だったり。現在は不要になってそのままお休み中の施設ももちろんある。できることならそのままの姿をいつまでも留めて欲しい。
■建物財産標
駅の建造物には、建物財産標が貼られている。しかし、改築によってなくなってしまったり、あったとしても目立たないところにひっそりと貼られていたりで、なかなか見つけることができない。それゆえ、運良く見つかったとき、駅の歴史に出会えた気がして、嬉しくなる。
■ベンチ
列車を待つ間、腰をかけるベンチ。列車に乗るために駅にやってきて、間に合ったなとベンチに座るとき、ほっとした気持ちになる。冬の寒い日に、赤々と燃えるストーブを囲むように置かれたベンチに座ると心の底から温かくなれる。長い間の年輪を刻んだ木製のベンチは温かく、近代的なプラスチックのベンチはカラフルだ。どんなベンチでも、駅の風景に溶け込んだとき、美しい形になる。
■鐵道レトロ
駅舎はどんどん近代的になる。しかし、その中で取り残されたようなレトロな姿を目にすることがある。レトロなものたちの中には、今なおしっかりと役目を果たすものもあれば、役目を終え、ひっそりと佇むものもある。どちらにしても、思いがけずその姿を見るとき、ほっとして心が穏やかになる。
■ヘッドマーク
優等列車は美しい。彼らはその美しに誇りを持ってひた走る。私たちは彼らに敬意を表し、愛称をささげる。そしてそれに似合ったデザインをトレードマークとし、先頭車両に掲げる。ここに列車への、そこはかとない愛を感じる。
■駅のねこさん
駅とねこさんはなぜか絵になる。人々の生活の営みの中に、自然に溶け込むねこさんたち。命ある彼らを「部品」とういうのはあまりにも傲慢だけれど、ひたむきに生きる彼らの愛らしい姿をとどめておきたい。